鮭の中から1グラム3,000万円の成分?美容と健康に革命をもたらす夢の“プロテオグリカン”とは

鮭の中から1グラム3,000万円の成分?美容と健康に革命をもたらす夢の“プロテオグリカン”とは

以前は1グラムの製造に3,000万円もかかっていた、金やダイヤモンドよりも高価な“プロテオグリカン”という成分がある。美容や健康の分野で、かつてないほど優れた効果をもたらす夢の新成分と期待されていたが、あまりに高価なため、実用化は不可能だと思われていた。

 

しかし、諦めなかった人々と、青森に古くから伝わる郷土料理との出逢いが生み出した奇跡によって、実用化という夢が叶うこととなった。

 

一体、プロテオグリカンの周辺に何が起きたのか?

不可能だったプロテオグリカンの実用化

糖タンパクの一種であるプロテオグリカンは、美容成分として有名なコラーゲンやヒアルロン酸の仲間で、人体の中にも元々存在している成分である。

 

発見当初は、主にウシの軟骨の中から、人体に有害な様々な薬剤を使って抽出する必要があり、莫大な労力と費用がかかっていた。そのため研究はなかなか進まず、さらにBSE(牛海綿状脳症)が流行したこともあって、安全性という面でも高いハードルがあり、実用化は不可能だと思われていた。

 

糖タンパクの研究で長い歴史を持つ青森の弘前大学も、早くからこのプロテオグリカンに注目して研究に取り組んでいた。プロテオグリカンが鮭の鼻軟骨の中にも含まれているということが分かっていたものの、そこから抽出する方法が見つからず、研究は難航していたと言う。

 

そんな中、弘前のとある居酒屋の席での何気ない出来事から、プロテオグリカンの研究は急展開を見せることになる。

青森の文化と、弘前大学の技術の出逢いが起こした奇跡

「この奇跡はどこでも起きていたわけではありません。」そう語るのは、株式会社角弘プロテオグリカン研究所の米塚正人所長だ。角弘は、弘前で明治時代(1883年)から続く、地域に根付いてものづくりを行ってきた老舗企業であり、プロテオグリカンの研究にも古くから取り組んでいる。

 

「氷頭なます」という、鮭の氷頭(鼻軟骨)を酢に漬けて柔らかくして作る弘前の郷土料理を、当時プロテオグリカン研究の中心を担っていた弘前大学の高垣啓一教授が口にした時、「これだ!」と思いついたという。酢に漬けることで鮭の氷頭が柔らかくなるということから、酢によって軟骨組織がゆるみ、プロテオグリカンが溶け出しているのでは、という仮説を思いついたのだ。

 

古くから鮭の産地で食文化もあった青森という土地と、糖タンパクの研究を長年続けてきた歴史と技術のある弘前大学だったからこそ、この奇跡は生まれたのである。

 

長い間、人々が実際に食べていた方法で抽出ができる。費用の面でも、安全性の面でも、この奇跡と呼べる発見の意味は大きかった。

 

奇跡のきっかけとなった、青森の郷土料理「氷頭なます」

奇跡のきっかけとなった、青森の郷土料理「氷頭なます」

ついに実用化。そして世界へ

プロテオグリカンの製造を行う、株式会社角弘プロテオグリカン研究所の米塚正人所長

プロテオグリカンの製造を行う、株式会社角弘プロテオグリカン研究所の米塚正人所長

大きな設備を動かせる民間企業パートナーとして弘前大学から声のかかった角弘であったが、これまでに経験のない分野で、当初はいつ利益が出るか分からない赤字事業であったため、社内には反対の声もあったという。

 

「これだけ可能性があるのに、私が諦めるわけにはいかなかった。」米塚所長はそう振り返る。出会う研究者達は口々に「今まで扱った成分の中で一番面白い」と語り、展示会に行けば「若い頃この素材に興味があったが、当時は諦めるしかなかったので、ぜひ続けて欲しい」と激励された。

 

海外では「ぜひうちの国にも工場を作って欲しい」と声をかけられることもあったという。

 

事業継続のためには成長スピードを上げる必要があると考え、岐阜の一丸ファルコス株式会社と手を組む決断をする。これまで青森を中心に進めてきた事業だったため、県外企業の参画には少なからず抵抗があったものの、原料メーカーとして世界で有数の技術力を持つ一丸ファルコスの協力は必須と考えた。

 

そしてついに実用化に成功し、国からもその価値を認められ、補助金や社外の様々な研究者達の協力も得られた。青森県の行政や研究機関も、プロテオグリカン産業の拡大に取り組んだ。

 

米国の展示会で、一丸ファルコスのプロテオグリカンが「最優秀原料賞」を受賞

米国の展示会で、一丸ファルコスのプロテオグリカンが「最優秀原料賞」を受賞

さらにこのプロテオグリカンに関する産学官共同プロジェクトが農林水産大臣賞や文部科学大臣賞を受賞した。2017年には一丸ファルコスのプロテオグリカンが米国で開かれた展示会「ナチュラルプロダクツEXPO」において、最新の優れた機能性原料に贈られる「最優秀原料賞」を受賞し、世界中からも注目を集めている。

 

「まだまだ色々な分野で可能性のある素材です。新しい分野では、抽出の仕方もそれに応じたものに変えることができます。」世に先駆けて取り組み、今では会社を代表する事業の一つに育ったプロテオグリカン研究は、もう次に向けて走り出している。

美容業界に走った衝撃

化粧品としてのプロテオグリカンを支える、美容アドバイザーの林志津子氏

化粧品としてのプロテオグリカンを支える、美容アドバイザーの林志津子氏

「こんな成分は今までにありませんでした。」プロテオグリカンの第一印象をそう語るのは、フランスの有名ブランドで化粧品の製造販売責任者を長年務めた経歴を持つ、林志津子氏だ。弘前出身という縁で、プロテオグリカン事業に美容アドバイザーとして関わっている。

 

厚労省が化粧品の効能の範囲を定義しており、その中で「肌」に関する項目は16個ある。プロテオグリカンはなんと一つだけでそのほぼ全てを満たしているという。積み重ねられた研究によって、多くの効能が証明されているのだ。

 

「美容で一番大切なことは保湿。特にシワを予防するために保湿が大事。」と林氏は考える。保湿成分として有名なものにヒアルロン酸があるが、プロテオグリカンにはそれと同等以上の保湿力があると実証されている。さらに肌だけでなく、今後は毛髪や歯科領域に対しても効果が実証されてくる可能性があると、林氏は期待を語る。

 

また、別の実験結果によると、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促す働きも確認できているという。化粧品として塗布することで外側から肌の保湿能を改善するだけでなく、経口摂取によって体の内側からも肌のたるみやシワを改善することが期待できるのだ。さらには「細胞のよみがえり因子」と呼ばれるEGFという成分に酷似した機能が確認できたという研究結果もあり、皮膚細胞や軟骨自体の再生を促す効果さえも期待できる。

 

美容分野だけでも、プロテオグリカンがもたらす衝撃は大きい。

健康と医療分野での、終わりなき新発見

プロテオグリカン研究の中心を担う、弘前大学の中根明夫特任教授

プロテオグリカン研究の中心を担う、弘前大学の中根明夫特任教授

高垣教授は残念ながら56歳という若さでこの世を後にしたが、その意志は引き継がれ、弘前大学では今日もプロテオグリカンの研究が続く。

 

「1つの素材でこんなに長く研究ができることは珍しいんです。」高垣教授と生前に交流があり、現在のプロテオグリカン研究の中心を担う中根明夫特任教授はそう語る。ほとんどの素材は1つのことを研究するとそれで終わりになるが、プロテオグリカンには新たな発見が出続けるため、いまだに終わりが見えない。

 

中根特任教授がプロテオグリカンの免疫力についての研究を行った際も、いきなり驚かされたという。一般的に糖類には免疫力を上げる効果があるため、糖鎖を持つプロテオグリカンにも同様の効果を期待していたが、結果は真逆で免疫を抑えたのだ。これが実は画期的なことで、過剰な免疫を抑えて正常化させることで、「炎症」の改善につながることが分かった。

 

炎症性腸疾患や関節炎(関節リウマチ)に加え、肥満や花粉症も炎症が原因であるため、これらの改善にも動物レベルでは効果が認められている。さらに未解決疾病と呼ばれる糖尿病、多発性硬化症や骨粗しょう症という治療が難しい病気に対しても、動物レベルでは実際に効果が出ているという。将来的にはサプリメントだけでなく治療薬としても利用され、未解決疾病の治療につながることが期待されている。

 

「今後は健康寿命、つまり日常的な医療や介護を必要とせずに健康を保てることが大切だと考えています。」と中根特任教授は語る。これまでも様々なサプリメントが世に登場しては話題になったものの、科学的根拠に乏しいために信頼を得られず、消えていった。プロテオグリカンはすでに効果は実証されているため、なぜ効果があるのかというメカニズムを解き明かし、一般の人々がより安心して使えるようになることを目指している。

 

高齢化や医療費などの深刻な問題を抱える現代社会においても、この研究の意義は大きい。

 

弘前大学では新たな発見を求め、今日もプロテオグリカン研究が続く

弘前大学では新たな発見を求め、今日もプロテオグリカン研究が続く

あおもりPGマークに込められているもの

あおもりPGブランド認証マーク。消費者が安心してプロテオグリカンを選べる指標(マーク)

あおもりPGブランド認証マーク。消費者が安心してプロテオグリカンを選べる指標(マーク)

プロテオグリカンは、青森県を中心に約40年間続けてきた研究の成果もあって、すでに200種類以上の製品で使われるようになり、知名度や市場規模も年々拡大を続けてきている。量産化が可能となったことで、プロテオグリカン研究は世界中で進められており、商品開発も今後グローバルに多くの企業が参入してくるであろう。

 

さらなる発展が見込まれる中、もし品質の悪いプロテオグリカン商品が出回ることになれば、プロテオグリカン自体の安全性や信頼性が下がってしまう可能性がある。

 

それを避け、プロテオグリカンを守りたいという想いから「あおもりPGブランド認証制度」という制度が立ち上がった。弘前大学が開発した技術から製造されたプロテオグリカンのみを使用し、配合量などの一定の基準を満たした商品にだけ「あおもりPG」というブランドの使用を認めることで、一般の人々は安心してプロテオグリカンを選ぶことができる。

 

「あおもりPG」のマークには、これまで数多くの人々がプロテオグリカンという夢に懸けてきた想い、そして膨大な時間をかけて積み重ねられた研究の成果が込められている。

プロテオグリカンは、人類史をも塗り替えるか

美容と健康、さらには医療の面でもかつてない効果が証明され、そして今でも人類に新たな可能性を見せ続けてくれているプロテオグリカン。人体の何か根本的なところに作用しているようにさえ感じるこの成分は、もしかすると今後、歴史を塗り替えるような世紀の大発見となる可能性もある。

 

長年の文化と技術、そして何より人々の想いが、青森の小さな居酒屋で偶然に交わって生まれた奇跡だが、それは人類の進歩にとっては必然だったのかもしれない。

 

人々の夢が詰まったプロテオグリカン。これから我々にどんな未来を見せてくれるのか

人々の夢が詰まったプロテオグリカン。これから我々にどんな未来を見せてくれるのか

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